ふるさとの昔ばなしシリーズ 鉾田市
貧乏神が福の神
むかし、大竹村(現在の鉾田市大竹)に、貧しいけれどたいそう働き者の夫婦がおりました。
朝から晩まで一生懸命農作業に精を出し、夜なべ*1もしていたのですが、暮らしはいっこうに楽になりませんでした。
ある晩、夫婦がいつものように夜なべをしていると、突然、目の前に痩せこけてみすぼらしいなりをした小さなおじいさんがあらわれました。
そして、おじいさんは二人に向かって、「わしは貧乏神*2じゃ。この家にずっと住みつくつもりでいたが、お前達があまりにも働き者なので、どうも住みにくくてかなわん。よそに行くことにした。」というのです。
それから、「今夜の四つどき(午後十時頃)、向こうの山道を鈴をつけた馬が通るから、その馬の横腹を竹やり*3で突きなさい。」というと、すっとどこかに消えてしまいました。
夫婦はしばらくあっ気にとられていましたが、神様のいうことだから従うしかないだろうと、ひとまず竹やりを用意して家を出ました。
「神様のいう向こうの山ってどこのことだろう。馬の横腹を突けというが、どうやって突けばいいんだろう。」 夫婦はぶつぶついいながら暗い山道に入ると、木の切り株に腰を下ろして鈴をつけた馬を待つことにしました。
しばらくすると、どこからかひづめ*4の音が聞こえ始めたのです。
そして、かすかに鈴の音も聞こえてきます。「これだ。」夫婦は顔を見合わせ、身がまえました。
ひづめの音と鈴の音がどんどん近づいてきて、やがて馬が夫婦の目の前にあらわれたのです。男は、馬めがけ無我夢中で竹やりを突き出しました。
すると、馬の腹から何か光るものがチャリンチャリンとこぼれ落ちてくるのです。
近寄ってよくみると、何とそこには星明かりにキラキラ光る小判*5の山がありました。
そして不思議なことに、突いたはずの馬はいつのまにか消えてしまっていたのです。
夫婦は、貧乏神のおかげで大金持ちになり、幸せに暮らしたということです。
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- *1 夜なべ
- 夜に仕事をすること。また、その仕事。
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- *2 貧乏神
- 人にとりついてその人に貧乏をもたらすといわれる神。小さく、痩せこけて色青ざめ、手に破れた渋団扇を持ち、悲しそうに立つという。
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- *3 竹やり
- 竹槍。竹の幹の上端を斜めに切りとがらせて、槍の代りにしたもの。
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- *4 ひづめ(蹄)
- 牛・馬・羊・象など有蹄類の脚先にある硬い角質の爪。
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- *5 小判
- 天正(1573〜1592年)頃から江戸末期まで行われた、薄い楕円形の金貨。その1枚は1両に相当。
- 参考資料
- 「茨城県の民話と伝説」(下)ふるさとの夢と笑いと涙 (藤田稔著)
「茨城のむかし話」(茨城民俗学会編)



