繭玉とお月様(かすみがうら市)
今では少なくなりましたが、小正月*1には県内でも作物の豊作や無病息災*2などを祈る行事が各地で行われておりました。
十四日に行われる行事としては、「繭玉」(成木もち・花もち・お飾り)、「良い耳聞け」、「鳥追い」(ワァホイ)、「ドンドヤキ」、「柿の木責め」などがありました。
十四日に行われる行事としては、「繭玉」(成木もち・花もち・お飾り)、「良い耳聞け」、「鳥追い」(ワァホイ)、「ドンドヤキ」、「柿の木責め」などがありました。
その中で、繭が豊かにできることを予祝*3する行事、「繭玉」にまつわるお話です。
むかし、下志筑(現在のかすみがうら市下志筑)のある農家で、ことしは小正月の繭玉祭りを盛大にやろうということになりました。
梁*4にとどきそうな大きなナラ*5の木を切ってきて、枝という枝に数人がかりでびっしりと小さな餅を飾り付けました。
そして、その繭玉飾りを茶の間の柱にくくりつけてみると、まるで一面にぱっと花が咲いたような見事な出来ばえで、みんな大満足。さっそくお祝いのごちそうが並べられ、繭玉の下で酒盛りが始まったのです。
それからしばらくすると、一人の男が「あれっ。」と、びっくりしたような声をあげました。みんなが男の指差す先を見上げると、繭玉の木の上のほうに白く光る丸い大きなものがかかっているのです。
「あんな所にお月様が・・・」 「おいおい、お月様はあのとおり空に光ってるぞ。」 外を見やると、確かにお月様は空にあり、その場は騒然となりました。
一人の男が、「ひょっとして、これはあいつのしわざかも・・・」というと、急いで箒を取りに行きました。このあたりでは、いたずら狸に化かされたという話がけっこうあり、時にはお月様にも化けるという話を思い出しからです。
男は箒を頭上高く振り上げると、お月様らしきものを思いっきり叩きました。すると、ドスーンという大きな音を立てて黒いものが床に落ちてきたのです。近づいて見ると、大きな狸が白いおなかを上にして気を失っておりました。
参考資料- 「千代田村の民俗」(千代田村教育委員会)
「茨城の民俗文化」(藤田稔著)