ふるさとの昔ばなしシリーズ 水戸市

朝寝坊山

むかし、ダイダラボウ*1という大男がおりました。山のように大きな体で力持ち。でも、体に似合わずとても気が優しいので、みんなに好かれておりました。

ダイダラボウが住んでいたのは大足(現在の水戸市大足町)というところで、村人は田や畑をたがやして暮らしておりました。


ある日、ダイダラボウは、仕事帰りの村人たちが、南の方の朝房山を見上げながらぐちをこぼして*2いるのを耳にしました。


「あの山さえなければ、田んぼや畑にたっぷり日があたって、作物も今の倍はとれるのになぁ。」
「それに、日があたらねぇもんだから、朝寝坊にはなるし、洗濯物も乾かねぇ。」
「特に冬は寒くてたまらないよ。とは言っても、どうしようもないなぁ。」
「あの山を朝房山なんて呼ぶ者はいないよ。みんな朝寝坊山って言ってるよ。」


それを聞いたダイダラボウは、(よし、みんなの役に立つのはこういうときだ。村の人たちのために、あの山をよそへ移してやろう。) と決心しました。


あくる日、ダイダラボウは朝房山を動かし始めました。両手で朝房山をしっかりと抱えこみ、渾身*3の力をふりしぼって持ち上げると、のっしのっしと人の住んでいない北の方に向かいました。


さすがに大力*4のダイダラボウも汗だくになり、やっとのことで山を移動させたのです。


山が北に移ったおかげで、村では朝寝坊する人もいなくなり、日あたりが良くなって田畑の作物もたくさんとれるようになりました。


村人たちは、これもみんなダイダラボウのおかげと感謝したということです。

 

標高二〇一.一メートルの朝房山は、城里町に近い水戸市と笠間市の境にあります。



*1 ダイダラボウ
茨城では、デエダラボウ・ダイダラボッチなどの名で親しまれている伝説上の巨人。
*2 ぐち(愚痴)をこぼす
言ってもどうにもならないことを不平混じりに言う。
*3 渾身
体全体、全身、満身。
*4 大力
人並み外れた強い力。また、その力の持ち主。


参考資料
  • 「茨城の伝説」(今瀬文也・武田静澄共著)
    「茨城のむかし話」(茨城民俗学会編)
    「水戸の民話」(藤田稔編)
    「常陽藝文 一九九〇/三月号」(財団法人常陽藝文センター)