ふるさとの昔ばなしシリーズ つくば市

玉取 一ノ矢

つくば市玉取の一ノ矢地区にある「一ノ矢八坂神社」は、牛頭天王*1を祭ることから「一ノ矢の天王様」の名で親しまれています。

疫病*2除けの神様としても知られ、毎年七月(旧六月七日)に行われる祗園祭には、境内は厄除け*3・疫病除けにご利益があると言われるニンニクを売る露店*4でにぎわいます。


一ノ矢八坂神社のある「玉取」「一ノ矢」の地名については次のような興味深い言い伝えが残っています。


むかし、この一帯に九州からカラスの大群が飛んで来て農作物を荒らしまわりました。


困りはてた村人たちは、近くの村々から弓の名人に集まってもらい、カラスを射止めることにしたのです。


その時、最初の矢でカラスを射落とした場所が天王様のあたりで、そこを一ノ矢と呼ぶようになりました。


そして、不思議なことにこのカラスには足が六本もあり、その足でしっかりと玉をつかんでいたことから、この一帯を玉取(玉鳥)と言うようになったのだそうです。


また、同じ地名にまつわる話ですが、ちょっと違う言い伝えもあります。


むかし、九州から飛来した一羽のカラスに田畑を荒らされ、村人たちが大変困っておりました。


ある日、それを見かねた旭友永という弓の名人が申し出てカラス退治をすることになったのです。


友永が放った第一の矢はかわされて八坂神社の境内に落ちました。それ以来、そこは一ノ矢の天王様と呼ばれることになったのだそうです。


続く第二の矢もかわされ、今度こそはと祈る気持ちで放った第三の矢が見事命中したのです。この時射落とされたのは三本足のカラスでした。


村人がほっとしたのも束の間、やがて埋葬したカラスの亡霊が夜な夜な現れて旅人を悩ますようになり、またしても友永が退治することになったのです。


ある夜のこと、友永が亡霊を取り押さえて斧を振り下ろすと、美しい玉を残して消えてしまいました。


友永は、後々たたりが無いようにと、その玉を筑波山の両部権現の宮に納めました。それ以来、このあたりを玉取と呼ぶようになったと言うことです。



*1 牛頭天王
もとインドの祗園精舎の守護神。除疫神として都の祗園社(八坂神社)などに祭る。
*2 疫病
悪性の伝染性の熱病。流行病。
*3 厄除け
災厄を払いよけること。また、その方法。厄払い。
*4 露店
道路のかたわらで商品を陳列して売る店。


参考資料
「茨城の伝説」(今瀬文也・武田静澄共著)
「大穂町の昔ばなし」(佐野春介著)
「大穂町」(茨城県商工会連合会)
「いろりばた 筑波野の昔話」(仲田安夫著)
「大穂町史」(つくば市大穂地区教育事務所発行)
「つくばの昔ばなし」(筑波書林)