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- たっつぁいと狐(那珂市) / 2008年1月掲載
ふるさとの昔ばなしシリーズ 那珂市
たっつぁいと狐
(今夜も冷えこみそうだ。ひとつ、いたずら狐をこらしめてやるか。)
たっつぁいは、池で大きな鯉*1を釣り上げると、鯉に麻糸を結んで池にもどし、糸のもう一方の端を自分の帯に結びつけました。
そして、後向きになってしゃがんでいると、やがて一人の若者があらわれて親しげに話しかけてきたのです。
「たっつぁいさん、そんな格好で何をしてるんですか。」 「鯉を釣っているんだ。」と答えると、若者はけげん*2な顔でじっと見ているのです。
そこで、たっつぁいは勢いよくでんぐり返り*3、いかにも今釣り上げたかのように鯉を引き上げて見せました。
若者は目を丸くしておどろき、釣り方を教えてくれと頼みました。
たっつぁいが「これは爺さまから教わったことで、めったに他人には教えられない。」と断ると、若者は小判*4をさし出したのです。
小判を受け取ったたっつぁいは、「爺さまに聞いた話なんだが、鯉の大好物は狸か狐のしっぽの毛だそうだ。これは爺さまが残してくれたもので、なかなか手に入らないんだが、狐の毛が一番いい。」と犬のしっぽの毛を見せて帰っていきました。
たっつぁいの姿が見えなくなると、若者は狐の姿にもどり、(いいことを教えてもらった。これで大好きな鯉が腹いっぱい食べられるぞ。)と、うれしそうにしっぽを水に入れました。
それからしばらくして、狐はもう鯉がかかった頃かとしっぽを引き上げようとしましたが、重くて動かないのです。狐は大物が釣れたと喜んで力まかせに引っぱりましたが、それでもビクともしません。池はいつの間にか厚い氷におおわれ、狐のしっぽも凍りついてしまっていたのです。
東の空が明るくなると、たっつぁいが犬をつれてやってきました。狐は犬が大の苦手。逃げようと死にものぐるいでしっぽを引っぱったので、付け根からちぎれてしまい、泣きながら山に帰っていきました。
それ以来、このあたりでは狐に化かされることはなくなったということです。
参考資料- 「常陸のたっつぁい噺」那珂町額田の民話(大録義行編)