ふるさとの昔ばなしシリーズ 石岡市

龍神山

石岡市の「常陸風土記の丘」から一キロメートルほど北に、標高一九六メートルの龍神山があります。

この山は、村上、染谷の両村落にまたがり、むかし、村上には雄竜、染谷には雌竜の夫婦の竜*1がすんでいたのだそうです。

雌竜は月のきれいな夜になると東南麓の柏原池まで下りてきて、池のほとりを気ままに散策するのを楽しみにしておりました。

雌竜は美しい娘に姿を変えていたので、この娘の噂は、いつしか府中の町に広がり、やがて城中の侍達にまでも届くようになりました。

ある月夜のこと、お城の若侍が、その噂が本当かどうか確かめようと柏原池にやって来ました。

そして、美しい娘の姿を一目見るなり、すっかり心を奪われてしまったのです。それからというもの、若侍は毎晩のように池に通いつめました。

やがて、若侍の思いが通じたのか、月の光をあびて語り合う二人の姿が見られるようになったのです。ところが、そんな幸せも長くは続きませんでした。

ある夜、若侍は池に落ちて死んでしまったのです。若侍の死を知った雌竜は嘆き悲しみ、二度と柏原池に姿を現すことはなかったということです。

また、龍神山には、「茨城童子」という鬼がすんでいたという話があります。巨大な体の鬼*2は、夜になると山里に下りて来て、人をさらっては、腰につけた大きな巾着袋*3に入れて山にもどり、食べてしまうというのです。

ところがある日、このおそろしい鬼が突如、龍神山から姿を消してしまいました。たいそう腕の立つ武将が茨城童子を退治に来るという噂を聞き、おそれをなして逃げ出してしまったのです。

その時、邪魔になって放り投げた巾着袋が茨城(石岡市茨城)の万福寺の西側の畑にめり込みました。
そこには、茨城童子の「きんちゃく石」といわれる大きな石が、わずかに表面だけ顔をのぞかせています。

巾着袋の紐を通した留め具の石だけが残ったものと言い伝えられています。ちなみに、その石の大きさは、一片が一メートル強のさいころ状で、紐を通す穴の直径が四十七センチメートルもあるのだそうです。
 


 

 

*1 竜
想像上の動物。体は巨大な蛇に似て鱗におおわれ、体に4本の足、2本の角とひげをもつ。雲を起こし雨を降らせ、また、淵にすみ、時に天に昇るという。縁起のよい動物。たつ。雄竜は男の竜、雌竜は女の竜。
*2 鬼
想像上の怪物。人身に牛の角や虎の牙を持ち、裸で虎のふんどしをしめている。怪力で性質は荒い。
*3 巾着袋
布・皮などでつくり、口をひもでくくり、中に金銭などの小物を入れて携帯する袋。

 
参考資料
「石岡市史 上巻」(石岡市)
「石岡市の昔ばなし」(仲田安夫著)
「茨城の伝説」(今瀬文也・武田静澄共著)