伊福部岳の雷神(日立市)
むかし、仲の良い兄と妹が隣り合った田でそれぞれ田植えをしておりました。
そのうち急に雲行きがあやしくなり雷が鳴り始めたので、兄は妹に 「そろそろ切り上げよう。暗くなるまで仕事をしていると伊福部岳の雷神が怒り出すぞ。」といいました。
そのうち急に雲行きがあやしくなり雷が鳴り始めたので、兄は妹に 「そろそろ切り上げよう。暗くなるまで仕事をしていると伊福部岳の雷神が怒り出すぞ。」といいました。
でも、仕事が遅い妹は「もう少しだから。」と夕方まで田植えを続けておりました。すると、突然、雷鳴がとどろき、妹は雷に打たれて死んでしまったのです。
兄は嘆き悲しみ、そして雷神*1をうらんで妹の仇を討とうと決心しました。でも、雷神の居どころがわかりませんでした。そんなある日、一羽の雌雉が兄の肩に止まったのです。
兄はその雉の尾に麻糸を結びつけ、「伊福部岳の雷神の居どころを教えておくれ。」と頼みました。
すると、雉はサッと飛び立ち、雷神のすむ岩屋*2まで道案内をしてくれたのです。
兄は岩穴の中で眠っている雷神を見つけると、「罪のない妹をなぜ殺した!」と刀を抜いて斬りかかろうとしました。
すると、目を覚ました雷神は、「お願いです。命だけはお助けください。そのかわり、ずっと後の世まであなたの住むところに雷が落ちるおそれがないようにいたします。」と、泣いて命乞いをするのです。
兄はそんな雷神をあわれに思い、助けてやりました。それからというもの、この土地には落雷の心配がなくなり、人々は安心して暮らせるようになりました。
兄は雉の恩に感謝し、このことは村人にも伝えられたので、その後、土地の人々は雉を食べなくなったのだそうです。
これは日立市川尻町に伝わるお話で、伊福部岳というのは川尻町近くにある山ではないかといわれています。横穴群のある「かんぶり穴」ではないか、あるいは石尊山だろうといった説もありますが、いずれも定かではありません。
参考資料- 「日立の伝説 続」(柴田勇一郎著)
「いばらきのむかし話」(藤田稔編)